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パンケーキはブスの食べ物

あくまで可愛いのはパンケーキであってわたしではないのだ。

新海誠の「わすれられないひとがいる」という表現

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君の名は。を見た。

 

1回目を友人と見に行って「超よかったよ~」「一緒に見に行きたい~」とはしゃぐ彼に誘われ、映画館へ。

彼は2回目になるのにも関わらず私を誘った。

同じ映画を2回も見るなんてマジでジブリ以外に記憶が無いよもののけ姫以来じゃない?当時、齢5歳だった私はオッコトヌシ様の触手モードがキモすぎてそのときだけ座席たってロビーでモロが事を収めてくれるのを待ってた。(それなのに2回も見に行ったしその後ビデオを購入し何度も見た。)今はハウル派です。

 

土曜日の朝、ネット予約を開くと既にレイトショーの時間まで座席が埋まり始めていた。

100億円の新海誠とはこういうことか。

 

私たちは映像に迫力が生まれ画面がゆがんで見えないだろうと判断した後列中央部分の座席を予約し、レイトショーに向かった。

 

私は全く感情移入できず、心を動かされず、理解もできなかった。

2時間弱の間、新海監督と瀧くんと三葉ちゃんと彼氏においていかれ、真っ暗な空間と沈み込むソファに取り残された。

眼窩にはただただ広い、軽井沢で見たような青空とゴジラが破壊し焼き尽くした綺麗な東京が広がるばかりだった。

「俺が考えたJR四ッ谷駅の最強にかっこいいPV」を押し付けられている気分にさえなった。四ッ谷駅乗り降りしたい。

 

それでも見終わった後は気分が高揚し映画館から彼の家まで総武線の駅にして3駅ほどの距離を1時間かけて歩いた。エモさに浸りたかった。「エモい私と彼」になりたかった。レイトショー終了後に歩いたら確実に帰宅が12時をまわるだろうと判っていながら歩きたいと言う私に付き合ってくれる彼がいる。人通りは無く自動車もまばらになった国道を歩いた。恋人同士が電車の中で二人きりの世界になっている様子はしばしば見かけられるが、もうそんなものじゃ心が満たされない。私は、彼を巻き込んででも、泥で足が滑っても坂で転げてパンツが見えても走り続ける滝くんと三葉ちゃんになりたかったのかもしれない。

 

君の名は。が両手を挙げて絶賛できなかった理由は、秒速5センチメートルが心に響いてしまった少数派だったことに起因しているように感じられる。

「背景が綺麗」「リア充爆発」という情報だけ知っていたので村上春樹を髣髴とさせる主人公のモテモテ具合、想い出が時間により磨かれるエモさや童貞特有のキモさ、独りよがり、忘れられない人が居る可哀想な傷ついたエンジェル貴樹のナルシストっぷりに圧倒された。キモい。新海誠、キモい!

私の心の中にも童貞男子が居るので「初めて心から恋したひと」を忘れられず5年ほど貴樹のように大手町や国道沿いや駅前や学校やバイト先やネットの中で「初めて心から恋したひと」を探していた時期があった。高3から大学生の時期は正常範囲を超えてストーカーになっていたと思う。面影を求めていろんな男と遊び1~2ヶ月付き合い続けた。ツイッターアカウントがバレて浮気を詰められたこともあった。その「初めて心から恋したひと」と同じ苗字の男と付き合い自然消滅させたこともあった。

 

現彼氏と秒速5センチメートルを見たときに貴樹へ同情してしまった私は、視聴後はききたくもないであろう元彼の話を一方的にした。日常生活に支障をきたすほど病み付きになっていたこと、本命彼女だと思っていたら全然そうじゃなかったこと、知らない間に別の女と結婚していたこと、現彼と付き合い始めて半年程気持ちの整理が間に合わず忘れられていなかったこと、しかし今はあなたに夢中ですということまで話した。

ハッピーエンドにまとめたけれど話しても彼を苦しめるだけの情報だった。私一人で抱えていればよいものを半分持たせようとしてしまった。コスモナウトで自分の初恋の思い出という心の闇を盾に花苗を傷つけた貴樹のように、私も自分の思い出を他人に押し付けようとした。心の中の童貞男子が貴樹に共鳴してしまう。

 

はてなブログホッテントリにも毎日君の名は。のレビューや考察が上がる。twitterでも四六時中見かける。日本の700万人が東宝にダメだしを受け童貞特有のキモさが抜け切ったエンターテイナー新海誠にとらわれている。

 

君の名は。においても、瀧くんは最終的に過去へとらわれた。新海監督が表現する「ここではないどこか」にとらわれている男が私は大好物だ。

PlasticTreeの有村さんが「送らないメールを書いた儀式も今日で最後に止めにします」と歌うように「てのとどかないだれか」や「わすれらないひとがいる」という事にとらわれている男はとても女々しく、そしてそれは男にしか出来ない行動のように思う。魅力的だし情けないし心の闇だし、それがなおさらインテリ理系男子であれば私は問答無用で好きになっちゃう。

 

 

瀧くんはセカイを救って可愛い女の子と運命的に再会する。RADWIMPSは「前前前世」と歌ったが、この作品の時間軸は輪廻的な円環にはなっていないように思う。もっと判りやすく直線的に表現されていた。隕石が落ちてきて三葉が死ぬセカイを瀧くんが救い、三葉が死なないセカイへ時間軸が切り替わる。そして最後記憶が無くなり出来事を繰り返したり過去にタイムスリップすることも無くなる。いや、タイムスリップする必要も、もちろん過去にとらわれる必要も無い。だって、三葉と一緒に居るセカイにたどり着いたから。

心の中の童貞男子が瀧くんをうらんでいる。もっと過去にとらわれて死んだ目で街を歩きノルウェイの森の主人公ばりにモテて自分をかわいそがってほしかった。

瀧くんは何一つ童貞らしさがない。マジでいい男。新海誠の中に居る童貞を置いてきぼりに、東宝帝国の中で三葉と幸せになってほしい。