パンケーキはブスの食べ物

あくまで可愛いのはパンケーキであってわたしではないのだ。

ホワイトデーは私のことをいっぱい考えてくれたんだっていうことがわかる成果物が欲しい

「ホワイトデーは何が欲しい?」

 

週末、横浜みなとみらいでシェイプオブウォーターを見た帰り道。アカデミー賞が楽しみだね、なんて話しながら駅ビルのコージーコーナー前を通り過ぎたとき、彼に訊かれた。

 

欲しい欲しいと最近ずっとねだっているのはプロポーズである。婚約指輪が欲しい。3年付き合って同棲もしてまだなのか。眺めの良いレストランで小さな箱からダイヤモンドを開けて一言コメントをもらいたい。そのコメントは使い古された言い回しでいい。オリンピック選手のインタビューみたいな気が利いた言葉じゃなくていい。そう言い続けている。踏ん切りがつかないのはわかっているし、百貨店のジュエリーカウンターで立ち止まったこともティファニーのショップに入ったことがないことも知っている。大丸や高島屋でせっせと集めたスタージュエリーやラザールダイヤモンドのパンフレットをテレビの前に置いているのに全然見てくれなくて、とうとうホコリも積もりだした。白と銀のなめらかな表紙はすっかりくすんでしまっている。もういいもん読んでくれないなら捨てる。あのね、典型的なゼクハラをしているって私、わかってるよ。それなのにホワイトデーには何が欲しいだなんて訊かないでほしい。欲しいものをわかっていて、なお訊ねるというのは、「婚約指輪以外でよろしく」という意味だ。言った。言ってやったよ。「フライパンの蓋が欲しい」って。私はバレンタインデーに豆香洞コーヒーのバレンタインブレンドとイカしたパンツを渡したっていうのに、それ、君に「何が欲しい?」なんて聞いてないじゃない。パンツめっちゃ履いてるじゃん。スタメンじゃん。今朝も履いてたし。コーヒーだってもう飲んじゃったし。早っ。付き合って3年もたつんだから、私のことよく知っておいてよ。よく見て。いつも使ってる香水、だんだん減ってきているよ。毎日アイシャドウの色もパンプスも変えてるよ。記念日や誕生日に渡したプレゼントにお手紙つけてるのに一回も返事くれないし。てかそもそもフライパンの蓋なんか自分で買えるし。お手紙の返事、レシートの裏に書いたっていいんだよ。ストレートに欲しいものを聞いてくる男にしてしまったのも私が細かい注文をしたり、クリスマス前にあからさまに欲しいものを話したり(今回は全然話してないから聞いてきたのかな)、そういうことをしちゃったからだし、手紙だって約束したわけじゃなくて自分で勝手に始めたことなんだから返事が来なくたってそれに文句言っちゃいけないんだし、全部全部エゴだよ。期待したほうがつらくなる。好きになったほうがまけ。たまには夕飯の献立を考えてよ。私のこともっと考えてよ。こんなにも満たされた生活をしているのに、わたし、ついつい欲張っちゃって、つらいよ。ホワイトデーは私のことをいっぱい考えてくれたんだっていうことがわかるなんかをください。フライパンの蓋は自分のお金で買うよ。